事業理念

創設者川原田政太郎は後世の研究者に向かって
『科学技術は奇術ではない、すべて大自然の法則にしたがっているのみである。われわれは毎日その自然の法則にしたがって生き、物を作っている。そしてその改良進歩は、またその大自然の法則にしたがって行うより他に手はない。それゆえ、われわれは常に細心の注意を払って大自然の秘訣を見破らなければならない。大自然はその秘訣を決して大声では喋らない。しかし常にそれを囁いている』
と述べている。

 平成23年3月の大地震、大津波、原子力発電の事故によって被った大災害からの復興の課題とその解決策は、昭和20年以降の戦後復興で得られた経験とその背景の理念に学ぶべきものが多い。長期的な視野による、抜本的課題を掘り起こし、基本的な解決策を実現することが肝要である。すなわち川原田政太郎が提唱した電磁応用の研究の理念は正に今日の日本(しいて言えば人類)が直面する課題にチャレンジする姿勢に通ずる。
本事業における『資源及びエネルギーの循環』とは『動脈産業と静脈産業』の概念を意味する。動脈産業とはA (資源の発掘・採取)、B(部品材料の設計・組立)、C(製品の販売・運用・保守)の一連の産業構造をさし、生産者から消費者を結ぶ一連の生産物と情報の流れを形成するネットワークイメージに対応する。
  静脈産業とは、生産物を消費する過程で発生する物(たとえば、故障物、廃棄物)と情報の流れを形成するネットワークイメージに対応する。社会機構における動脈産業と静脈産業の交流の接点は心臓に相当する機能と末端の毛細血管に相当する機能とがある。
従来の多くの産業において、動脈の機能だけが成長し、確立してきた。上下水道、中古車市場、分別回収、都市鉱脈などは静脈産業と見ることができるが、動脈と静脈の機能の有機的な連携が確立されているとはい言い難い。電気自動車の電池は消耗品であるため、地球的規模の回収システムの確立が重要となる。
  自然再生エネルギーにおいても発電、送電の技術的課題に合わせえて、システム運用維持のための、故障の修理、障害機材の回収、災害時の機能維持などのネットワーク機能が不可避である。新技術による安全で経済的な小型原子力発電設備が実現できるとしても、核燃料廃棄物の地球的規模で合意される人類の叡智によるネットワーク機能が必要となる。
言い換えると、電磁応用研究の対象とするネットワークとその社会機能はいわゆる『スマート社会』の概念と共通する。
  本事業は『電磁応用』に関する研究の調査研究とその助成を通じ、情報通信による電力、自動車、住宅、オフィス、産業の統合化による低炭素社会の実現に関する国際的、学際的調査研究について、テーマを設定して、研究者、資金などを決定し、自主事業および連携事業として実施する。


公益財団法人申請作業方針における理事会資料抜粋
平成23年5月31日
財団法人 電磁応用研究所 
理事長 富永英義
(早稲田大学 名誉教授)


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